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カメラを始めたきっかけ

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写真は全てX100F miyazakicity
問わず語りを無性にしたくなる、秋の隙間。




ここのところ、ブログを触る時間も取れず、下手すりゃ休日もない状態だったので、そんな合間にiPhoneのメモ機能で、以下のようなくだらないことを、折を見つけては書き続けてきた。時々無性に言葉を書き連ねたくなる。若い頃なら、もっと純文学気取った事柄でも書くのだろうけれど、どうもそんな自意識過剰な毒は抜けてしまっているようだ。いや、実際はまだ青くさいのだけれど。
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マップカメラが「私がカメラを始めたきっかけ」というリレー形式の記事を掲載している。カメラを売るためのサイトに、こんな記事が掲載されるというのはなかなかよいもので、つい遡って他の記事まで見てしまった。きっかけもさることながら、そこからずぶずぶとカメラの広く、深淵な沼にハマっていく過程まで知れるのもよい。さらにはそこから仕事をやめてマップの店員さんにまでなっている、という人もいて。ああ、あのお店、みんなカメラ好きなんだな、好きなモノを売れるというのはいいことだな、と思う。
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自分のカメラを始めたきっかけは、仕事で3週間のオーストラリア出張となったことだった。まだ、デジカメとフイルムが半々のころだったか。仕事の記録としてカメラが必要で、僕は親父から借りっぱなしになっているミノルタのα7000を持って行こうかと少し悩んで、ま、写ルンですでいいか、と簡単に考えていた。
そんなときに前年にオーストラリアに出張した方が、デジカメの方が便利だからとフジフイルムのコンデジを貸してくださった。これが最初のデジカメ体験だ。
フイルムカメラは大学時代に、先述したミノルタのオートフォーカスカメラを何か行事があるたびに使っていたのだけど、使い方もよく分からず、安いフイルムを買って突っ込んで、操作の仕方なんて分からないから、とりあえずプログラムって表記されたから、プログラムって自動で勝手に設定してくれるもんだろうと解釈、それでそれなりに撮影していた。一番最初のカメラ体験は、世界初のオートフォーカスカメラだったのだ。しかし、写し方やら構図やら、そんなことは気にもしなかったし、同じ学部の、写真学科の先輩たちが颯爽と歩いているその肩にかけたカメラが、小柄でデザインとしてもかっこいいことに、僕のと何が違うのも分からないでいるほどで、あるいは同期の写真学科生が、馬 鹿でかいカメラを持って、やっと買ったんだと見せてくれても、それがペンタックスの中判だということも、中判が10数枚しか撮れないと言われたことも、よく分からないくらいだった。もちろん今は先輩の肩にかかっていたのがマニュアルなカメラだってことも、中判がフイルムのサイズが違うってことも分かっているし、手にしたこともあるけれど。
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で、オーストラリアである。確かに便利だった。枚数を気にせずに撮影できるから、仕事の記録にちょうど良かった。写ルンですでは、というかフイルムでは何本も消費して、とんでもないことになっていたはずだ。
仕事は昼間で終わって、宿泊しているホテルに帰るとあとは何もすることがない。近くのスーパーなのかデパートだか、分からない、しかし洒落た店でその日の食材を買ったり、洋服を物色したりしているうちに、その店も早々に閉店になる、5時半とか、6時とか、そんな感じ、いや、もう少し長く営業しているときも曜日であったかな、ただその店のあたりが美しくって、小さな街なのに、居心地の良さはなかなかなものだ。でも、とにかく日が沈んだら、やることがない。
夕飯を作って、それはパスタだったり、肉じゃがを大量に作ったり、ティラミスを暇つぶしに作ったり、お肉を焼いてみたりと、バイトで培ったノウハウをあれこれやって、シャワーを浴びて、禁煙だから、外でタバコを吸ったら、あとはもう言葉の分からないテレビを見るくらいしかない。日本から持ってきた村上龍も1週間しないうちに読んでしまった。だから遅くても10時くらいには眠りにつくという超健全な生活をし、週末には斜向かいのパブで、日本の半値近くのギネスを飲むという生活だった。ビール以外に飲めるものが分からなかったんだね。聞けばいいものを、それを聞くこともしなかったってわけだ。コミュニケーション力と物怖じしない姿勢って大事だわ。
そんなだから、土日は、お世話してくれる現地の人に誘われたとき以外は何もすることがなくて、前に行った人はあちこちミニツアーなんかに参加したりして、紅の豚の秘密基地みたいなところまで行ったりしたそうだけれど、なにせ、メルボルンまでのチケットを取るのすら、電車でと思ったらバスのだったりと、とにかくあちこちするのに日本の数倍の、エネルギーを使うのだった。そう、語学は大事だ。国内から出て行くのであれば。

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そんなだから、とにかく散歩するのが日課になった。デパート前の街の作りの美しさは前述のとおりで、ジーロングは、海浜公園が美しく、歩いても歩いても飽きなかった。海辺を歩く、少し高台から海を眺める。家々の木々が薄い青空に映える。冬の、そんなに寒くはないけれど、あのなんとなく寂しさの混ざる光景を僕は忘れられないでいる。そうして散歩するしかないから、手にしていたカメラでなんでもないけど、美しく、日本とは違った光景にレンズを向ける日々が続いたのだった。スナップ写真が、僕の原点なのだ。
帰国してから、カメラを返して、すぐに家電量販店に足を運んだ。カメラを買おうと思ったのだ。でも何を買えば良いのかわからない。
条件は、オーストラリアで苦労した夜景が綺麗に撮れること。それも手持ちで。予算は最大三万円まで。あとはまあなんでも良かった。でも、その手持ちで夜景が撮れるなんて、そんなコンデジなど、当時あるはずもなく。オマケにデザイン的にグッとくるものも少なく、当時は漸く広角側が28ミリのズームレンズ搭載カメラが出始めたころで、それをウリにしている機種があり、へえ、こんなに違うんだね、くらいの認識しかしなかった。
店員さんがやってきて、僕の少ない条件を告げてオススメを聞いてみた。が、その条件は非常に厳しいものだと言われた。夜景を手持ちですか、と呟かれ、そんなのはないのだな、とそこでやっと理解した。少ない条件だが、ありえない条件だったわけだ。
そんなときにふと目に入ったカメラがあった。今思えば安っぽいのだけれど、それはそれこそ今から見ればiPhone4にも通じるデザインだった。僕のなかで、iPhoneにおいてデザイン的に一番秀逸だと思うのはiPhone4である。そのあとの5は縦に長すぎるし、軽い、プラスチックっぽい。iPhone4はいいものを持っている感じを抱かせる適度な重さと、側面をぐるりと囲むシルバーがかっこいい。6年は使った。お店で8に替えるとき、化石扱いされたくらいだ。僕が見つけたそのカメラには、あのiPhone4のようなかっこよさがあったのだ。質感はチープだけど。
そのカメラは、と、店員さんが話してくれた。
二つのレンズが付いていて、一つは普通のズームだけど、もう一方のがすごい、広角23ミリでしてね、不動産屋さんなんかはこんな広角のレンズで室内を撮るんです。ほかのカメラよりも広く撮れるんですよ。
僕はその広さの価値なんぞ分からなかったが、面白いカメラだと思った。価格は5万。予算オーバーである。でも、その見た目と不思議なレンズ二つの並びにやられて、そのまま買いますと言った。
それがコダックのV570である。
このカメラであちこち撮った。
23ミリは目の前の光景を広く切り取ってくれる。もう一つのレンズは37ミリから117ミリのズーム。23ミリと比べて画質は悪い。だから必然的に広角レンズの方ひとつでスナップする。よけいなものが映りこまないようにするには、画面の隅まで確認する必要があるし、主題をはっきりさせたいのならば、近づかなくてはならない。単焦点という制約、それも超広角域の入口の画角は、写真の難しさと、難しいからこその楽しさを教えてくれた。ポケットに入る大きさ、スタイリッシュなデザインに、東京に出張に行った際に会った写真学科の先輩にいいね、と言われたり、販売が終了してしばらく経ったあとにも、ヨドバシの店員さんから「いいカメラ持ってますね、広角域は貴重なんでずっと使ってくださいね」などと言われて、自分のモノを見る目がいいな、なんていい気になっていたりもした。
そうしているうちに、一眼レフに興味を持つようになっていった。V570の感度の低さに、やっぱり夜や夕暮れにもいい画質で撮りたいと思うようになったのだ。
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寂しい寂しいクリスマス。その前日。僕はヤマダにいた。この寂しさを埋めるためには、散財するしかない。そこで、たくさんのカメラの前で立ち尽くし、どれを買えばいいか分からず、写真学科の先輩にアドバイスをもらうために電話したり、なんたり、悩んで、でも結局価格で絞って、レンズがどうだとか分からないままに、他のカメラ初心者がついやってしまうように、キヤノンの、初級機のレンズキットを買ってしまったのだった。望遠レンズなんかとりあえずいらないし、と、標準ズームのみ。で、あとで、結局人から望遠を譲ってもらうことになるし、単焦点にはまるし、今の自分が、あのときの自分に言うならば、「とりあえずカメラはキスXでかまわんが、レンズはキタムラに行って単焦 点を買っておけ」である。でも、クリスマスの、田舎の、ささやかに電飾が施されている通りを、三脚つけて夜、冷たい空気のなかで撮影すると、それはもうとてもきれいに撮れて、やっぱり一眼レフだな、そういえば子どものころに読んだ児童書に、交通事故で死んだ少年が幽霊となって、有名なバイオリ二ストの少年とともに、これが事故ではなく、殺人ではないかと捜査に出る、という話のなかで、犯人の証拠をつかむために、夜星の写真を撮りたいからと言い訳して、どんなカメラがいいかと親に訊いたところ、「一眼レフでないと難しいね」と答えるシーンがあるのだけれど、僕はあのころ、一眼レフってどんなやつなんだろう、どう違うのだろう、うちにあるカメラと、と思ったことを思い出す、でも、 うちにあったα7000がそもそも一眼レフだったわけで、そうして今、自分の金で、デジタル一眼レフを買うなんてことになるとは思いも寄らない話で、さらに思いも寄らなかったこととして、デジタル一眼レフは、当時ファインダーのみで、液晶を見ながら写真を撮ることができないことを知り、じゃあ、なんで液晶があるんだ? 再生画像確認のためだけじゃんか、と不思議に思ったりもして、そうやって小さな疑問やワクワクが、いつのまにやら写真の技法を覚えさせ、モードをPからAvに変えさせ、一眼レフ二台体制にさせ、フルサイズの魔力にさらされ、さらに単焦点を買わせ、フィルムカメラに走らせ、中判を譲り受け、ライカをいただき、振り返ってみればそこそこ恐ろしいことになっているのだと、使い込ん だお金のことは、独身時代のこととはいえ、今もやっぱりX100Fなんかを買ってにんまりしてしまうものだから、妻にはあんまり言えないのであった。

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世の中にはもしかしたら自分とさほど歳がかわらなそうな方がデジタルライカをいくつも買っていたり、超でかい砲塔のようなレンズを振り回していたりもするのを見かけたりするのだけれど、こんな人達はどうやってお金の工面をしているのだろうか、と思ったりもする。一般の人からしてみれば、自分も相当なものだろうけれど、僕にはまたまだ見ぬ深い深い沼があって、その沼底でにやにやと、あるいはいきいきと写真趣味を楽しんでいらっしゃる方がいる。ライカM10で、僕も街中をさっそうと歩いてみたいし、F0.95の明るいレンズで撮ってはみたいと思うけれど、それを実行するならば、いろいろ社会人として、家族人としていろいろ捨ててしまうことになるので、まだ僕の沼は浅い方だと勝手に思っている。けれども、その沼のきっかけは、あのオーストラリアでの仕事で借りた、今だったら全くもって低いスペックのコンデジだったことを思うと、おそろしい逆わらしべ長者的現象を、引き起こしてきたのだと思って、一人ぞっとしたりもするのである。

Commented by border72 at 2018-10-15 04:42
カメラを始めたきっかけ
楽しく読ませていただきました。

私の場合も独身の頃に仕事がらみでEOS650を買ったあたりからですね。
その頃彼女だった現嫁にもEOSの望遠キットを買わせて二人でいろいろ撮ってました。(彼女はそれを持って嫁に来ました。)
デジタル一眼に手を出したのはずっと後で、職場のHPを作らねばならなくなってからです。
Commented by eureka_kbym at 2018-11-04 05:44
border72さん 返事遅くなりました。
カメラと奥様にまつわる素敵なお話、ヤケますね。なんとまあ、嫁入り道具となった思い出のカメラ。いいお話です。
って考えてみたら、自分も似たようなことをしておりました。
で、今思うと、なぜ僕はあの時オリンパスじゃなくて富士フィルムを勧めてなかったのか、という後悔が…。
by eureka_kbym | 2018-10-11 23:19 | camera | Comments(2)

little island walking,

現在、EOS6D EOS5Dmark2 X100 X100Tを主に使ってあちこち撮り歩くだけのブログです。http://eureka69.exblog.jp/fp/cameras


by eureka_kbym
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