斜め下30度の乳母車
2008年 03月 24日
向かい風が強いと
乳母車さえ倒れてしまうから
僕は注意深く
足下をしっかりみて
こけないように歩かなくてはならなかった
しっかりと一歩一歩を大切にして
アスファルトの灰色の
かすかな隙間に
右足を取られないように
僕は歩かなくてはならなかった
だからいつも自分のこうべは
斜め下85度に傾いて
生温いため息をついてばかり
太陽があんなに真っ青なことも
分からずに歩いていた。
たとえば好きな女の子の
愛らしい瞳さえ
まっすぐに見つめられないで
「あなたのことが好きなんです」
と 云えることさえ
知らずにいたのだ
今日も風は強くて
足下をすくわれないように
僕のこうべは
斜め下30度に傾いているけれど
その55度分の成長を
ささやかに喜びながら
乳母車に赤ん坊がいなかったことに
ほっとしつつ
僕はうつむきかげんにまた歩き始めた。
by eureka_kbym
| 2008-03-24 22:56
| olympus pen fv
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