遠巻きに見ている
2008年 10月 07日
さよなら さよなら さよなら
いつも自分の記憶は
遠巻きに見ている誰かの笑顔や
やさしい遠景だったりして
その情景との境には
どこかうすい幕で仕切られている
たとえばそれは
バナナの品薄や
ダイエットのためのダンスビデオ
納豆が陳列棚から消えたときも
僕は「ふうん」といった態度で
肉を食い タバコを吸い 酒を呑んだ
かわいい女の子の 首もとのネックレスや
お洒落な薬指の指輪
男女の組まれたその腕に
僕は「ふうん」といった態度で
女優をみて アイドルをみて 布団に入った
仕事場のおしゃべりも
日曜日のショッピングモールも
田舎の寄り合いも
親戚の集まりも
僕は「ふうん」といった態度で
ただひたすら 転機が訪れるのを待っていた
その子は体温計を脇にさした
子供の頃からのぜんそくがときどきぶりかえすのだ
ふだん見る事のない肩肌が
つるんと熱を発していた
その首の上の方に
隠されていたネックレスに
だらりと指輪がずりあがる
「あ、37度6分 ちょっと高いなあ」
彼女はきちんとボタンをかけた
この、つまらない自我をやっつけるために
僕はわがままを言い、
愚痴を一人ごち
車を飛ばして
一日を乱暴に過ごしている
そうして出てきた夢の景色は
いつも淡々と遠い遠い情景を映し出し
触れようものなら目は覚めて
遠い遠いところに
置き去りにされた気分になる
さよなら さよなら さよなら
つまらない遠近感の錯覚よ
僕はまだ 誰からも遠い場所にいて
ひとりつまらない意地を張っている
船出はきっと誰も知らない25時
方位磁石もなにも持たないで
僕は誰からも忘れ去られる
遠い景色の一部のように
さよなら さよなら さよなら
やっぱり遠くに灯りが見える
by eureka_kbym
| 2008-10-07 21:36
| EOSKissDigitalX
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